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タックスヘイブン、税金を払わないグローバル企業
2013/06/15(Sat)
国境を超えた税金逃れの租税回避マネーが世界中で深刻な問題になっている。

乱高下する日本株式相場も、租税回避マネーが投機マネーとなって、日本を舞台にマネーゲームが仕掛けられたためだ。

黒田日銀による異次元の金融緩和マネーが、タックスヘイブン(租税回避地)に流れ込んで、世界中の金融緩和マネーと一緒になって、ヘッジファンドがマネーゲームを行っている。つまり、日本がタックスヘイブンの資金源になっている。投機マネーで得た利益に対しても非課税なのだ。タックスヘイブンは、世界中のマネーを飲み込んでいるのだ。

タックスヘイブンは、税率が極端に低く、金融情報を秘匿する国々のことで、カリブ海や地中海、太平洋、欧州の島国が代表的である。脱税や薬物犯罪資金のロンダリング、テロ資金の隠匿など、あらゆる諸悪の温床になっている。

タックスヘイブンに設立したヘッジファンドが、世界中から集めた巨額の投機資金をハイリスク・ハイリターンのマネーゲームに投入するため、金融危機を引き起こしている。近年の金融危機には、すべてタックスヘイブンが関わっており、ヘッジファンドが市場で、各国政府を相手にマネーゲームを仕掛けている。安定した市場では商機をつかめないからだ。

タックスヘイブンの害悪に気付いていても、主権国家の壁や国際政治の力関係が作用して、有効な手段を打てずにいる。どこかのタックスヘイブンをたたいても、別のタックスヘイブンに移るだけである。タックスヘイブンは、人間の強欲が生んだ怪物である。

タックスヘイブンは、租税競争で、法人税を極端に低くして、非課税にしたりして、世界中の企業や富裕層から資金を呼び込もうとしている。そのため、グーグル、アップル、アマゾンなどグルーバル企業は、国境を超えて事業を展開するため、税率の低い国で課税されないようにしている。

こうした租税競争は、国家の課税基盤をむしばみ、社会保障や福祉を削減させる。租税競争や税逃れは、租税国家の首を絞めるため、世界から資本を呼び込む経済活性化策は、かえって拍車を掛けることになり、矛盾を内包したままである。

国家を揺るがす租税回避マネーは、深刻な緊縮財政をもたらし、国民の生活を破壊する事態にまで発展している。

ブラザ合意以来、変動相場制に変わったことで、マネーの縛りが無くなり、実物経済に結びつかないマネーが増大した結果、ネット取引の普及で大量の投機マネーが瞬時に国境を超えることになった。

1%の富裕層が、税を逃れる手段を持ち、残り99%の中・低所得層が尻ぬぐいするように重税に耐えている。富裕層がタックスヘイブンに保有する金融資産は、少なくとも21兆ドル(約2100兆円)ともいわれている。

英国では、行政サービスを削る緊縮財政に反対し、税逃れをする企業から徴税を訴える「アンカット運動」が起きており、スターバックスコーヒー店の前で、「税を払え」と盛んに抗議デモが行われている。租税回避するグローバル企業は、国民の税金で提供されるインフラや行政サービスをただで利用して、食い物にしているからだ。税を払う国民が負担を強いられている構図になっている。増税や歳出削減などの緊縮策で痛みを強いられる国民の怒りが爆発している。

租税回避マネーの問題を解決するためには、国際金融取引に課税するトービン税というアイデアがとっくに出ているにもかかわらず、英国などの反対で、未だに実施されていない。こうしたなか、税収不足に悩む先進各国は、協調してタックスヘイブンや租税回避スキームへの包囲作戦を形成しているが、十分な取り締まりになっていない。

グローバル企業による租税回避は、攻撃的になっており、国家の財政基盤を揺るがしかねないため、主要国首脳会議(サミット)では、多国籍企業の租税回避防止策が経済分野の主要議題となっている。グルーバル化が進んでいる今日、一国だけでは根絶できないからだ。

ギリシャの債務危機も、脱税が横行したことから始まった。タックスヘイブンの闇を消すためにも、お金に手綱をかける改革が必要であるのに、遅々として進んでいない。それが進まないかぎり、罪の無い国民を苦しめ、国家を破綻に導くだけである。
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北朝鮮のチキンレースで高まる日本の核武装化
2013/05/07(Tue)
北朝鮮は、国際社会が要求する非核化を無視し続けて、核実験を繰り返し、事実上の核保有国となった。

北朝鮮は、朝鮮戦争の休戦協定を「白紙化」し、米国への先制核攻撃の示唆など、過激な発言を繰り返して、「最後の決戦の時が来た」と危機感を煽っている。初めて中国が賛成した国連安全保障理事会の追加制裁決議に対しても、挑戦的で威嚇の姿勢を取り続けている。中国の指導部や世論からは、弟分である北朝鮮の「裏切り」への非難が表面化してきたが、中国も北朝鮮の暴走を押さえきれない。

北朝鮮が核保有に必死になったのは、ブッシュ前政権によるイラク攻撃から始まっている。当時、イラクのフセイン政権は、核を持っているとも、持っていないともあやふやな姿勢に終始したことで、米軍の攻撃を受けて崩壊したため、それを見た北朝鮮は、核保有を公言しないと、イラク崩壊のようになると考え、核兵器開発へ急いでいる。

北朝鮮は、深刻な食糧不足に直面しているにもかかわらず、軍の強硬派が、貿易の利権を握る「先軍政治」の特権を守ろうと、核ビジネスを展開し、イランに核ミサイルを売り込もうとしている。

北朝鮮の異様な強硬姿勢の背景には、軍と政府の対立や軍内部での権力闘争があると見られている。複雑な派閥抗争で「統合失調」が起きているのは、戦前の日本の軍国主義と同様、軍が勝手に軍事作戦を進め、国の信用を傷つけたことに似た症状を示している。ブレーキが壊れた車で、チキンレースを展開している。

北朝鮮の狙いは、チキンレースのハードルを上げて、高く上げた拳を下ろす代わりに少しでも多くの援助を勝ち取る、いつもの恫喝外交だ。

弾道ミサイル発射の構えを示す北朝鮮の挑発的行為は、東アジアの危機管理を巡る日米中3カ国の力学に影響を与えている。米国は核開発を止めない北朝鮮にいら立ち、危機の封じ込めに躍起となり、対中関係を深めている。

中国は米国の動静を見極めながら、尖閣諸島への領海侵犯を繰り返して、日本に対し攻勢に転じているのは、米中接近による対米関係に自信を深めているからだ。

強大化する軍事力を背景とした中国と核ミサイル保有の北朝鮮のせいで、日本に対する軍事的脅威が高まっている。中国や北朝鮮の脅威が強まるにつれ抑止力を高める必要がある。

日本に7分で着弾する北朝鮮の弾道ミサイルは、同時に十数発を発射されると、どれが核付きのミサイルか分からない。イージス艦用迎撃ミサイルSM3は、8発、パトリオットPAC3は発射機1輌に4発しか積んでいないため、気休め程度しかならず、現状の弾道ミサイル防衛対策では、不充分だ。ムスダンのようにどこにあるか詳しい位置が分からず、地表に出てから10分程度で発射するものに対しては先制攻撃も不可能だ。

北朝鮮の核に対抗するには「核武装して抑止をはかるしかない」との議論が高まっている。「北朝鮮問題が深刻化すれば、日本国内で核武装すべきだとの声が強まる」とキシンジャー元米国務長官は、日韓両国の核武装の可能性を既に指摘していた。最近、米国連邦議会の上院外交委員会でも、「日本の核武装」が主要なテーマとなっている。

中国も日韓の核武装を警戒している。日本の核武装は戦略的悪夢となるからだ。
そのため、日韓の核武装阻止は米中両国の最大の関心事になっている。

核武装の手っ取り早い方法はトライデント型戦略潜水艦に装備する弾道ミサイルのW88核弾頭の共同管理だ。ドイツは米国との核の共同管理で既に核武装している。

米国が対日外交で最も警戒しているのは、北朝鮮や中国の核の脅威によって、日本で核武装論が高まることだ。日本の核武装を阻止するための究極の「核の傘」強化策として、核兵器を搭載した米海軍の艦船に日本の自衛隊員を乗り込ませて米国の核兵器を日本に共同管理させるという日米共同管理構想が論議されている。米国の核の導入と共同管理の方が、米国の「核の傘」をより強固なものになるからだ。

最大の火元である北朝鮮は、関係国の反対を押し切って、弾道ミサイル発射や核実験を強行するのか。その動きによっては、東アジアの危機管理を巡る日米中の力学が崩れて、新たな変化も出てくる。

解決の道が全く見えないだけに、日本に戦後これほどの危機があったか、と思えるほど憂慮すべき状況だ。軍事的な手段で対抗することは、リスクが多きすぎて賢明ではないだろう。結局、北朝鮮の経済が成り立たないほど、厳しい経済制裁を国際社会が科し、指導体制を締め上げていくしかない。中国が核開発の資金提供している北朝鮮国営銀行の口座を閉鎖し、取引を禁止したことは、その流れからして当然の措置だ。
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「一票の格差」は、政治家が有権者を選ぶことに問題
2013/04/05(Fri)
「決められない政治」の象徴だった衆院の「一票の格差」は、最高裁の違憲審査権による再三の警告にもかかわらず、根本的な是正に取り組まない国会に対し、高等裁判所が初めて無効判決という「伝家の宝刀」を抜いて、政界に大きな衝撃を与えた。

すでに最高裁で「違憲状態」とされた前回の選挙区割りのままで再び選挙を行ったのだから、昨年12月の衆院選を無効とする判断を下した判決は、当然だ。「投票価値の平等」に真正面から向き合おうとしない政治に対する司法からの強烈な警告で、このままでは国会が「違憲の府」になってしまう。

「違憲の選挙」で議席を得た国会議員が法律や予算をつくり、「違憲の議会」が内閣を選び、国の歩む方向を決めるのは、異様である。

最高裁の「憲法に違反する状態」という判決にもかかわらず、昨年12月の衆院選ではそれを解消しなかった。各政党が、自分たちに有利になるように有権者のまとめ方を主張し合って譲らなかったからだ。党利党略絡みの百家争鳴で、一本化できない。ここは第三者にゆだねるほかない。

「一票の格差」は、民主的政治過程の土台である「投票価値の平等」を傷つける問題であり、国会のこうした「司法の違憲審査権」の軽視は、三権分立という民主主義の根幹をゆるがせにする行為である。違憲でも混乱を回避する事情を汲んで無効にはしないだろうとの甘えがあった。

こうした問題が起こる根本的な理由は、選挙制度や定数、区割りなどを決める実質的な権限が国会にあることだ。

政党や政治家は、有権者に選ばれる立場であるのに、「一票の格差」問題では、まるで政党や政治家が有権者を選んでいるからだ。

利害当事者である国会議員が、自分たちの利害に関わる件について自分たちで決定を下すシステムがある以上、利害当事者が自分に不利益になる決定を下せるはずがない。また利害の相反する者たちが行う協議がスムーズに運ぶはずもなく、結論など出てこない。利害関係者に任せるのではなく、利害関係のない第三者機関を設け、抜本的な選挙制度の改革を進めるべきであろう。

厳密な数字による選挙区割りの変更が保障される仕組みこそ、民主主義を成り立たせる最低の条件である。いまこそ実質的な権限を利害当事者から国民に移すべき時である。国民が納得しうる選挙制度改革案を提示するのでなければ、違憲選挙という異常事態は解消されない。

「一票の格差」が是正されない限り、国会議員の多数意見が、国民の本当の多数意見を反映しているとは言えない。憲法は「主権者は、国民」と定めている。主権者である国民の多数意見が、国家権力を行使できるようにすべきである。偽りの民意で「決められる」政治が断行されている。日本は、必ずしも、多数決で法律をつくっていない。多数決の保障のない日本は、民主主義国家ではない。

「主権者は、国民」が憲法の根幹である以上、国会議員は、あくまで国民の代弁者のはず。「国会議員選出の1票が等価」である根拠は、選出選挙区の「国会議員一人当りの主権者の数」が同数であること以外にあり得ない。「一人一票」である。あくまでも人口比例が民主主義の原理原則であり、選挙制度で民主主義のガバナンスを整えるべきである。

政治は、選挙制度は誰のためにあるのか。もちろん国民および有権者のためにあるはずだ。

新たな区割りが決まっても、人口は常に変動しているわけだから、選挙区を区分する選挙では「一票の格差」が完全になくなることはない。また区割りの変更が必要になるからだ。

大選挙区の選挙制度にすれば一票の格差は小さくなり、全国1区にすればゼロになるに決まっている。大選挙区と相性の良いのは比例代表制である。

小選挙区は廃止して、民意が正確に反映しやすい比例代表制に統一すべきである。その上で、議員定数を変動制にする。つまり有権者数の変動に応じて、自動的に議員数が増減するようにする。これぐらいのことをしないと、「一票の格差」はなくならない。
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変われぬイタリア人と日本人の「バカの壁」
2013/03/16(Sat)
イタリアは、総選挙後、政局混乱に陥ったため、「無政府状態」が続いており、EUの信用不安が再燃している。事態打開には、再選挙が必死な情勢である。

既成政党に失望した多くの有権者は棄権し、緊縮財政に反発した有権者が、コメディアンが率いる新政党に投票したことで、安定政権ができなくなった。既成政治を否定する「アンチ政治」の嵐が吹き荒れている。長年の不透明ななれ合い政治で信用を失ったためだ。

巨額の借金、最貧国並みの低い成長率、世襲政治家などの固定化、官僚と大企業の癒着、若者や女性を阻む壁、広がる格差社会など、変われぬ大国としてよく引き合いに出されるのが、イタリアと日本だ。問題点もよく似ている。

日本も、復興予算の流用や手抜き除染などおそまつな対応で、政治システムが機能不全になっている。既得権層の保護、新規参入や競争を妨げる制度、法の支配を軽んじる風潮、国の保護と補助金を死守する農業団体、地域独占がもたらす高い電力料金に甘んじる産業界など、イタリアにそっくりである。

保守的な利益集団が、若い世代や起業家の自由な発想を妨げている。納めた税金は、無駄な公共事業に費やされ、政治家の背後にいる保守的な利権集団の懐に入り、国は巨額の借金を抱えている。中小企業主が支持する保守派と、労働組合に支えられた革新派との争いとなっているが、それぞれ自分たちの利権を守る点で、保守の構図になっている。業界団体や労働組合、年金受給者などの既得権益層が強すぎて、変化を求める若者をはじき飛ばしている。

政治、企業、メディアも閉じていて、グローバル化についていけない。深刻な判断を求められているのに、現実逃避を決め込む若者たちが増え、「見ざる、言わざる、聞かざる」を続け、思考停止状態の「バカの壁」である。

安倍政権の支持率は、右肩上がりで上昇し、70%近くに達している。リフレ政策のアベノミクスで円安・株高が進展したことが評価されたとの見方が多い。

だがその一方で、円安が進展したおかげで、小麦、ガソリン、食料油など生活必需品の値上げが続いている。これ以上の円安の進展は、短期的に家計を直撃するのは必至である。アベノミクスを賛成した人達は、「空気」だけ読んで「見ざる、言わざる、聞かざる」で支持したのであろうか。

安倍政権の執拗な求めに応じて日銀が掲げた2%の物価上昇目標は、多くの経済学者や市場も、中長期に実現するとはまともに信じていない。量的緩和でインフレが起こるなど幻想に過ぎないからだ。

実体経済のマネーより、金融商品で稼ごうとする投機マネーのほうが圧倒的に大きく、中央銀行が貨幣をいくら増やしても、実体経済には回らない。中央銀行は、貨幣をコントロールする機能をすでに失っているからだ。貨幣が制御不能になっているのが、大きな問題であるのに、この状態を放置しているかぎり、金融緩和をしても意味がない。

ゼロ金利下で、日銀がいくら銀行から短期国債を買っても、銀行が寝かせておいた国債が、寝かせておく現金に変わるだけで、実質的に何も変わらない。リフレ政策など、「バカの壁」である。

物価が2%上昇すれば、金利は3%ぐらいになる。賃金も3、4%ぐらい上がれば、企業のコストは膨らむし、国債価格が急落して、国家財政も、国債を大量に抱える銀行も困る。雇用に影響が出て労組も困る。そんな姿を誰が望むのであろうか。

株式市場が活気づいているのは、アベノミクスというプラセボ(偽薬)効果であり、「量的緩和によるインフレ期待」への期待によるものだ。円安や株高でアベノミクスを評価するのは、まだ早計である。

資本主義経済は、成長し続けないと行き詰まるという困った原理を持っている。
市場で競争する仕組みである以上、商品価格の下落はたえず起こる。企業は安くつくろうとし、賃金など労働コストを下げる。その結果、失業者や低賃金の人が増え、消費が落ちて市場が縮小している。これが今のデフレである。

「デフレ脱却」には、金融をはじめとするマクロ政策より、持続可能な労働の場をつくる雇用・労働政策が必要なのは明らかである。貨幣だけに頼る経済政策は、雇用の不安を解消することはできない。小手先の経済政策よりも、構造改革にすぐに手をつけるべきである。規制緩和や、雇用改革、北欧のように解雇されても、しっかりと個人セーフティネットで面倒をみる福祉という安心の仕組みが必要である。「空気」だけ読んで「見ざる、言わざる、聞かざる」の思考停止状態の「バカの壁」では、日本はどんどんダメになる。
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制御不能の円安によるインフレで、日本経済は破綻
2013/02/08(Fri)
安倍政権は、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」という「3本の矢」を放つ経済政策「アベノミクス」で、財政出動による公共事業を増やし、人からコンクリートへと昔の自民党に戻ってしまった。

「3本の矢」による経済再生など、一大実験であって一本調子に上向くとは思えず、机上の空論で、実効性・実現性はほとんどない。バラマキ政策を続けていると、逆に日本国債に対する信任が失われる恐れがある。

■ アベノミクスは、マネタイゼーションに向かっており、悪い円安が進む

安倍政権はマネタイゼーションに向けて動いている。政府が発行する国債を日銀が買い取り、紙幣の発行を引き受ける。すなわち、日銀による財政赤字の穴埋めで、財政ファイナンスである。マネタイゼーションの特徴は、財政政策の効果が切れると剥落するので、所得の先食いをするように、追加の財政出動が求められ、そのたびに日銀の積極的な金融緩和(国債購入)が必要になる。だが、こうしたマネタイゼーションは失敗するとその弊害は極めて大きい。

最悪のシナリオは、景気が回復せず、円安によるインフレで物価だけが上昇することにある。物価が上がり、さらには投機が始まると物価上昇は予想を上回る速度で進む。インフレターゲットの2%を少しでも上回れば、「これはもっと上がる」という期待感が高まって投機的な資金がさらに流れ、物価上昇が止まらなくなる恐れがあるからだ。長期金利上昇と円安の進展、インフレが、財政危機を招いて、金融システムが動揺し、資産逃避となるだろう。

■ アベノミクスの弱点は、個人所得が拡大せず、物価だけが上昇する

デフレの原因は、名目賃金の低下にある。非正規社員の増加と中高年社員の賃金が抑制されているからだ。企業は、利益を内部留保や株主配当に回し、従業員の賃金を上げないため、消費が抑えられ、デフレに陥っている。財界は、デフレ脱却に必要な賃金アップという選択を自ら捨てているため、賃金アップに慎重な企業は、デフレと景気低迷に苦しむ状況下にある。

不景気で賃金アップが望めないなら、年金制度の抜本的な改革と雇用対策で安定した収入を確保しつつ、社会保障の充実で将来の不安を払拭する必要がある。多くの国民は、年金制度など社会保障に不安を感じるため、貯蓄に励み、消費しないため、さらにデフレスパイラルが進んでいる。デフレ脱却の大きな鍵を握っている年金制度は本来、戦中の軍事費調達のために造られたものであって、今の少子高齢化の日本社会にそぐわない。

年金制度が破綻するのは目に見えているのに、それを改革できる力を持っている政治家は、年寄りばかりで自己保身や老後の安心を最優先にして年金制度改革は先送りにしている。

デフレ脱却を最重要課題に掲げ、リフレ政策を打ち出したのが安倍自民党政権である。首相就任前から「2%インフレ目標」「日銀法改正」「金融緩和」「円安」の可能性に言及したことを受けて、海外の機関投資家が、円は売り、日本株は買いあさり、円安・株高へと大きく動いた。円安は、輸出産業にはメリットがあるが、資源輸入国の日本は、ガソリン料金の値上げから、LNGの輸入価格上昇による電力料金の値上げ、輸入食品の値上げまでその影響をもろに受ける。

円安によるインフレが確実に起きて、賃金アップのない国民生活はさらに圧迫される。輸入物価の上昇によって物価目標2%が達成されてしまったら、日本経済が大きな打撃を受ける。もしそれが実現した場合、市中金利も2%に上昇する。自国の通貨危機で、強烈なインフレに見舞われた国は掃いて捨てるほどある。アルゼンチンの場合は、自国の通貨が急落して消費者物価指数がマイナス、つまり日本と同じデフレの状態から、一気に+25%のハイパー・インフレへと猛進したからだ。

日本経済は深刻な構造的な問題を抱えているのにもかかわらず、自民党の政策は、公共投資、税優遇、補助金等、昔の自民党と同じことをやろうとしている。これで景気が回復しなければ、財政赤字がますます増加する。間接的に所得補償をする補助金など、そのほとんどは農協などに中間搾取されてしまう。昔の自民党に戻ることが一番怖いのである。どこかで財政は破綻する。

■ 財政出動による公共事業は、費用対効果を無視しており、乗数効果はない

90年代初めにバブル経済が崩壊した後、自民党政権は公共事業に毎年10兆円ほど、なりふり構わぬ景気対策で約10年間に約120兆円を費やしたが、その結果、無駄な公共事業が多くなり、利用者が少ない空港や道路、施設など次々出来て、無駄な天下り先の温床となる財団法人も増大した。その一方で、建設会社が政治家や官僚に賄賂を贈る汚職も増えた。極めつきは、財政赤字の悪化である。

政府の借金残高は、90年度末の168兆円から、12年度末には、約700兆円に達した。費用対効果のない無駄な公共事業は減らすべきなのに、アベノミクスはその流れに逆行し、100年経っても返済できない借金残高をさらに増やそうとしている。

公共事業はやるたびに、乗数効果が段々と低減している。乗数効果が波及しない原因として、クレーンなど重機による工事の機械化が進んでおり、必要な人手は減っている。ゼネコンが大きな工事をとり、地方の建設会社に幅広くお金は回らず、裾野の雇用や給与は増えない。

経営の苦しいゼネコンに儲けが入っても、借金等の返済に資金が使われてしまい、結局は消費には回らない、先の東日本大震災での復興支援の多くもゼネコンが潤っただけで、被災地の地元は潤わなかったことからも分かることである。

公共事業による乗数効果は期待できるものではなく、低減させる様々な要因が絡みあっており、机上の空論である。古い自民党にもどった政治家が大好きな公共事業で、財政悪化にまっしぐらである。

少子高齢化で人口が減少する日本で、今、公共事業によるインフラ投資をしても、完成する頃には、利用する人がほとんどいなかったり、使われなくなったりする事態が予想され、インフラ政策は、大きな無駄を生むだけである。

■ 成長戦略は、公的資金による「救済策」で、実効性もない

成長戦略で問題になるのは、官民ファンドのようなものをつくって公的資金で企業を支援する政策だ。企業の投資負担を減らす目的で、ファンドが、既存の工場や生産設備を対象企業から、買い取った上で、設備を貸す「リースバック」という支援策が検討されている。モラルハザードを起こし、市場経済の根本を歪める恐れがある。

リース業界の現状を全く理解していないだけでなく、経営陣が判断ミスをして間違った投資をしたシャープなど特定の大手企業を念頭に置いた事実上の「救済策」と思われる杜撰な内容だ。血税を無駄にする。

政府のお金に頼らないと事業を展開できないような企業が、グローバル競争で勝てるはずがない。自民党政権は大盤振る舞いをする中で焼け太りをしようとしているとしか思えない。

■ ゾンビ企業を保護するのではなく、脆弱である社会的セーフティネットを手厚くすることが最良の成長戦略

米国やEU、日本が不況から脱却できないのに対し、北欧諸国は元気である。政府債務は欧米よりはるかに小さく、一人当たりGDPは、世界の上位を占め、成長率も高い。その最大の理由は政府の効率性にある。政府予算は公共事業や補助金ではなく所得の直接再分配に使われているため、個人のセーフティネットが手厚い。

経営の悪化したゾンビ企業は延命させずに破綻させ、失業者には職業訓練を施し、それを条件として手厚い失業手当を出す。産業別労組の組織率が高く再就職が容易なので、企業の破綻は多いが長期失業率は低い。労働者は失業を恐れなくてよく、自殺率は下がった。

安倍政権の「成長戦略」は、これとは真逆である。日本の経済成長に必要なのは、規制改革と企業の新陳代謝である。特に非製造業の規制緩和が進んでいない。 経営陣が判断ミスをしたゾンビ企業を延命させる一方で、個人に対するセーフティネットである生活保護も削減対象にある。

日本の経済成長を止めるゾンビ企業の保護政策はやめるべきである。ゾンビ企業が延命しているかぎり、健全で生産性の高い企業の新規参入や事業拡張を妨げる。優秀な労働者は、ロックインされた状態で、新しい分野への挑戦が阻害されている。政府は、企業の保護や規制を止めて、脆弱である社会的セーフティネットをしっかりと整備すべきであり、個人ベースの福祉社会に移行することが最良の成長戦略である。
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暗愚で無責任なアベノミクス
2012/12/27(Thu)
総選挙で国民の4割が棄権したため、自民党は4割の得票率で、3分の2近くの議席を独占した。国民の4割が棄権している以上、自民党の圧勝は、必ずしも民意を反映したものではなく、多党乱立と低投票率が自民党を利した結果だ。

安倍政権のインフレ目標による財政拡大路線は、目くらましで、本音はバラマキ公共事業のために、日銀に圧力をかけてバラマキ金融で、財政ファイナンスさせることである。自民党の集票部隊である土建業者に公共事業を発注するためには、国債を大量に発行するしかないのだ。

10年間で総額200兆円の公共事業を行なう国土強靱化法案は、名目は「災害対策」だが、土建業界に金を配って「昔の自民党」の栄光を取り戻そうという発想だ。

公共事業を10兆円規模でやっても、雇用や賃金が増えるわけではない。公共事業を担う建設会社は、このアベノミクスがいつまで続くが分からない心配があるからだ。

人口減少下の日本は、1000兆円を超える最悪の借金大国で、100年経っても返済不能の金額である。消費税増税も時すでに遅しである。巨額な財政赤字の上に、おまけに「200兆円の国債発行」などと、日本国債をバブル化しようとして、無責任ぶりはパワーアップしている。海外のヘッジファンドの多くが、「日本売り」のタイミングを虎視眈々と窺っている。外国の機関投資家は、逃げ足が早いからだ。

アベノミクスが成功して一番怖いのは長期金利の上昇だ。長期金利が上昇したら、住宅ローンを払っている人も、国債を保有している銀行も、発行元の政府も大変である。地方も含めて1000兆円に近い国債や地方債の金利が1%上昇したら、年間10兆円の利払い金が発生する。いくら景気回復で税収が増えても、10兆円の金利上昇には足りない。

安倍首相の政治的発言により、急ピッチで円が下がっている。これに関連して長期金利がじりじりと上がり始めている。安倍首相が今後も日銀を脅して財政・金融でお金をばらまけば、政治的要因で、悪い金利上昇と財政インフレが起きても不思議ではない。

インフレが2%になると、それに連動して長期金利も2%になる。結局は、長期金利を引き下げるために、日銀はインフレ目標を引き下げて、消費者物価を1%以下に抑える選択を余儀なくされるだけである。長期金利水準を1%程度に押しとどめたいと願うのならば、それと整合的な物価上昇率の目標値としては0-1%程度が妥当だ。日銀に求められる優先的役割は、可能な限り中長期金利を低位にかつ安定に保つことであり、インフレ目標など敷かなくてもよいのだ。

発展途上国なみの財政ファイナンスで、インフレにするつもりだろうが、日本でそんな政策をとると、1000兆円を超える政府債務の「時限爆弾」が爆発して、日本経済は財政破綻し、木っ端微塵になる。日本の経済・財政状態を考えると、とても2-3%の長期金利に耐えられない。長期金利が急上昇すれば、財政再建は頓挫しかねないからだ。政府債務の利払い費用が増え、税収はそれに食いつぶされてしまう。大量に国債を抱える銀行は、債券含み損を出し、倒産する。

暗愚で無責任なアベノミクスは、早晩行き詰まる。アベノミクスの終わりが国債の増加、円通貨に対する信頼性の下落、長期金利上昇、給料や年金は増えず、輸入品価格(ガソリンや輸入農産物など)だけが上がり、生活が苦しくなるに決まっている。

インフレによる円安誘導政策は、財政破綻を引き起こし、日本経済はクラッシュする。財政・金融で金をばらまく安倍政権は、ハイパーインフレに向かって一直線で、その死期を早めるおそれが強い。円が暴落し、円安による国際競争力の回復で、息を吹き返し社会をリセットするしか道は残されていない。

安倍政権は、できもしないホラを吹いて土建業者の票を集める、理性を失った「狂人」になってしまっている。反知性主義のヤンキーである安倍首相の頭の中が心配である。暗黒の4年が始まる。アベノミクスには、効果も副作用もある。要は、効果と副作用をコントロールする力量があるかどうかだ。経済は生き物で、今後何が起こるかも判らない。強風が吹きつける標高3000メートル級の細い尾根道を歩く困難なナローパスである。少しでもバランスを崩せば、谷底に滑落するリスクをはらんでいる。

デフレの原因は、自然利子率(≒潜在成長率=生産性上昇率+労働人口増加率)がマイナスになっており、生産性が低迷し、労働人口も減少しているからだ。また企業が賃金を上げずに、貯蓄超過となっているため、金利が低下しているのも要因のひとつだ。この状態を是正するには、日銀がお金をばらまくのではなく、政府や企業は、生産性を高め、労働人口を増やすように努めて、潜在成長率を引き上げる政策が必要なのだ。日銀にだけ圧力をかけてもデフレ脱却には向かわない。潜在成長率を引き上げるのは、「日銀の責任」ではなく、「政府の責任」なのである。

生産性が低下する要因のひとつに、同一労働、同一賃金が徹底されていないため、非正規社員に見られるように、安易に賃金を引下げることにある。その結果、ゾンビ企業が生き残っている。スウェーデンのように同一労働、同一賃金が徹底していれば、資本効率の悪いゾンビ企業は賃金を払えずにどんどん淘汰される。ゾンビ企業の存在は、健全で生産性の高い企業の新規参入や事業拡張を妨げる。ゾンビ企業が事業を継続すると、本来であればより生産性の高い企業に再配置されるべき労働者を雇用し続けることにより、日本経済の効率性が低下する。この結果、健全な企業の成長は抑制され、やがて経済全体の生産性の伸びが低下する。生産性の高い企業ほど国内から撤退して海外に移転する退出効果が、日本経済の病になっている。

こういうところにメスを加えないと、デフレ脱却は実現しない。企業が生産性に無頓着で、資本コストにも無自覚では、ゼロ金利が永遠に続くだけである。
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目に余るに政治家の軽さ、選ぶ目を持たない有権者
2012/11/22(Thu)
来る12月の総選挙で、与野党が交代する。

民主党は、政局やパフォーマンスで場当たり的な対応を繰り返し、現場を混乱させ、自民党のような政党に変貌し、民意に背いたことで、支持率を下げた。

第三極として注目される政党も、民主党や自民・公明両党との政策の違いについて、はっきりしない。違いが見えない政党が離合集散を繰り返し、乱極化している。有権者の政治不信に応じて立ち位置が変わり、既存体制を揺さぶることしか考えていない。

政権獲得を目指せば目指すほど、政策の違いが見えない方向に収斂している。日本維新の会も、場当たり的で一貫性がなく、橋下氏はどんどん変節している。候補者をじゃんけんで決めれば良いと、野合を重ねる姿勢は、有権者を愚弄している。橋下氏の「批判の政治」は、ブラック企業的な恐怖心で人々を突き動かそうとしているだけだ。

ポピュリズム政治家が主張する「選挙時」の政策は、票集めのための方便であって、現実無視の政策である。どの政党が与党になっても、現実追随で政策に変わりはないというリアリティがある。「選挙時」の現実無視と政権獲得後の現実追随との両極端に分解している。「選挙時」の政策なぞ、実現できるわけがない。権力に近づけば、現実化を余儀なくされ、弱い存在になるだけである。

自民の安倍総裁は、3%インフレターゲットを目標に、日銀は輪転機を無限に回し続けて、建設国債を直接買い付ければいいと、暴走した発言を繰り返し、現実無視の政策が最大の争点になっている。

お札を刷らせるだけ刷らせて、建設国債を直接買い取りさせれば、政府は、借金のし放題となり、お金は限りなく市中に出回り、急激なインフレを招く。円通貨や国債は暴落して金利が上昇するため、国債を大量に保有する銀行は倒産し、1000兆円を超える政府債務は破綻となり、日本経済は崩壊し、悲惨な結果になるに決まっている。金利上昇による金融危機を招くだけで、やってはいけない経済政策である。過去の歴史が示している。経団連会長からも「禁じ手」の政策で「無鉄砲」だと安倍発言を批判している。

与党となる首相候補が、大言壮語の経済政策で、「選挙時」の政策だとしても、現実無視は度を過ぎており、世界の物笑いの種になる。「輪転機を無限に回し続ければいい」などと、ポピュリズム政治家の存在の軽さは、目に余るものがある。おまけに「日銀との論争で勝負あった」と自画自賛し、子供じみたことを言っている。馬鹿げた経済知識で、世間の笑いものにならなければよいが。

声の大きいポピュリズム政治家の声だけが響き、真ん中の声は、すっぽり抜けている。代議制民主主義は、ポピュリズム政治家ばかりを増産する欠陥がある。しかも二院制の問題も放置したままである。解散権のない参議院が、衆議院の国政を牛耳っており、いつまで経ってもねじれ国会で、決められない政治が続いていくだけだ。

小泉元首相の郵政選挙の時も、3年前の政権交代選挙の時もそうだが、有権者は、メディアが煽る「劇場政治」の空気だけで判断してしまう愚を繰り返している。熱狂した後には、必ず落胆と失望がもたらされる。これもポピュリズム政治家の弊害である。

多くの有権者が、選挙時の「現実無視の政策」と政権後の「現実追随の政策」の違いを理解しようとせず、「選挙時」の政策が、そのまま現実の政策となると錯覚しているのも、問題である。永田町の政治家と同じ目線で見ている有権者もメディアも、永田町の住民と同じである。

勿論、現実追随に一本化した政策ばかりでは、国民は不幸になるだけである。現実の中に潜む、多様な政策の選択肢を検討した政策論争が求められるのに、選挙を目前にして、保身に走るポピュリズム政治家が右往左往しているのは、目に余る。

法律作りも予算編成も、事実上官僚達がやっているのが、日本の仕組みであり、政治家ではない。最大の政治勢力である官僚機構が、国政を牛耳っているからだ。官僚達が現実追随の政策で国政を動かしている背景があるからこそ、多くのポピュリズム政治家が、保身に走り、現実無視で、無策に等しい政策を主張できるのである。有権者は、ポピュリズム政治家ではなく、官僚機構が現実追随の政策を決めていることに気付くべきである。

求めるべき政治家は、「職業としての政治家」や「家業の世襲議員」ではなく、人々を導く上質な物語を語れる政治家である。「利益を分配する政治」や、「批判する政治」でもなく、「構築する政治」を展開できる政治家が求められるのだ。有権者も政治家の資質をよく吟味し、しっかりとした目を持って選ばないと、第三極劇場の空気に染まってしまい、政権交代後には、また落胆と失望が待っている。

ポピュリズムは、有権者の不勉強が一因となっていることも認識すべきであり、有権者も問われているのだ。有権者は、消費者化しており、これがダメなら次、次がダメならまた次と、政治そのものを疲弊させている。ポピュリズム政治家は、消費者化した有権者の一時的な欲望を満たす人気を得ればいいとしか考えていないからだ。
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誤認逮捕を繰り返すケーサツの不祥事
2012/11/08(Thu)
パソコンへのサイバー犯罪の脅威が日増しに高まっている。誤認逮捕につながった「遠隔操作」ウイルスは、世界中で最も流行しており、誰の身にも感染リスクが起こりうる。感染ウイルスの約7割が遠隔操作の機能を持つからだ。他人のパソコンを無差別に「遠隔操作」ウイルスで感染させ、命令待ちの状態にして、不正アクセスする手口が横行している。

こうした危険なサイバー環境にもかかわらず、警察は、第三者のパソコンを踏み台していることさえ、認識できず、IPアドレスだけを過信し、誤認逮捕までやってしまった。普通に生活している人が、いきなり犯罪者扱いにする。サイバー犯罪に対する捜査手法が、IPアドレス頼みで、メール送信時のアリバイも調べもせず、すべてが後手後手である。発信元をたどるだけでの警察には、捕まえられないとの印象を、悪意のあるハッカーたちに植え付けるだけだ。

海外の複数のサーバーを経由させて発信元を分からなくする匿名化技術を使われたら、世界中の国がすべてのサーバーに通信記録の保存を義務づけない限り、たどるのはほぼ不可能だ。警察のサイバー捜査体制や知識では対応に限界があるのは明らかで、ネットの秩序は崩壊し、不正書き込み放題になってしまった。

誤認逮捕は、「足利事件」や「東電女性社員殺害事件」に見られるようにDNA型鑑定頼みでも起こっている。DNA型が一致しても、犯行時に犯人がいた証拠にならないからだ。

捜査担当者の単純な思い込みに基づいて見込み捜査が行われ、誤った犯人の断定が行われる。捜査担当者にとって都合の良い証拠のみの採用し、都合の悪い証拠は隠蔽、捏造するなどして、さらに自白を強要し、冤罪を生じさせている。証拠の評価をないがしろにし、恣意的に評価を変えてしまう風潮がある。身柄を拘束し続けて自白をせまる「人質司法」は、密室で無制限に取り調べができる日本の刑事司法上の問題点だ。

今の司法は、「検察官司法」と呼ばれている。検察官主導で刑事裁判が進められ、検察官と仲間意識が強く、検察官に頼る裁判所も、検察官の主張通りに安易に追従して有罪判決を出す「有罪ボケ」の状態である。検察官と裁判所による司法組織が、簡単に有罪判決に仕立ててしまうため、マイナリーさんの再審無罪が出ても謝罪、反省もない。こうした「検察官司法」の制度を批判する市民社会が、検察による取調べの完全可視化や証拠開示を求めるのは、当然の流れである。

警察の不祥事は、絶えない。不祥事とよばれるものは多様で、単純なものとしては警察官が窃盗や暴行・傷害など犯罪行為を行うものがある。さらには暴力団から金をもらって捜査情報を漏洩し、女性部下には集団セクハラ、痴漢、飲酒運転は数知れず、悲痛な訴えには、職務怠慢で慰安旅行、大事故当夜には、宴会を開くなどと、不祥事を挙げれば、切りがない。

警察を監視強化しなければならない公安委員会も今や単なるお飾りにすぎず、警察の追認機関となっている。警察は、根本的対策に手をつけず、腐敗にふたをしまうため、不祥事が繰り返されるだけである。

わずか数百人のキャリア官僚が30万人のノンキャリアを上意下達で動かすだけでは、現場の組織はすさむし、冤罪を生みかねない。過酷な検挙ノルマに起因する検挙報告捏造、裏金作りに代表される不正経理問題もある。警察組織も一種の行政機関・官僚機構であることから、他の組織と同じような不正も当然起こしえる。さらには許認可権限や利権に絡み、関係団体への影響力で利権官庁化している。

不正を取り締まる立場にある警察の不祥事は、単にけしからんというだけでなく、人や国の将来を危うくしかねない。警察のありようを根本的に変える必要がある。
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いじめを生み出す空気を読む社会
2012/09/29(Sat)
いじめがまた問題化している。1980年代初めに社会問題となったいじめは、その後も、自殺を機に問題化しては、やがて沈静化することを繰り返している。昔からあったいじめが、社会問題となったのは、情報化社会への変容により、学校空間のコミュニケーション環境が大きく変化し、子供が感じる閉塞感が増大してきたからだ。

大津のいじめ事件のように、いじめの存在さえ認めず、次々と言い訳をする教育委員会や学校は、腐っている。学校現場は、何故いじめに向き合わず、いじめを隠蔽するのか。いじめ解決まで膨大な報告書の作成に大量の時間が費やされるのに、教育現場が嫌がっているからだ。人事評価への悪影響を心配し、いじめ報告を嫌がる校長や教頭も多い。その上、教育委員会は形骸化し、学校とのなれ合いが、いじめ問題ヘの隠蔽体質を生んでいる。

さらに事態が深刻化する背景には、事なかれ主義の教育行政があり、自分たちの評価が落ちないように「臭いモノには蓋をする」体質がある。文科省、県教育委員会、市町村教育委員会、学校という中央集権的ピラミッドの教育行政の人達で、このような体たらくである以上、いじめ問題を解決することは不可能である。

閉鎖的で固定的な集団組織は、似通った構成員により作られるため、他人の勧告や外部の情報を意図的に無視し、不合理で馬鹿げた意思決定をして、より危険性の高い方にシフトしてしまう。

しかしいじめの背景には、それだけでない。学校内外で、若者や子供が生きる世界はネット情報化し、人間関係のあり方も大きく変わってきた。互いに気を使い、察し合って「空気を読む」関係と自己への過剰な関心が絡み合っている。空気を読み合いし、大勢に順応する傍観者がさらにいじめを加速させている。

空気を読めという圧力の中で、周りの人から受け入れられるコミュニケーション能力が求められている。空気をうまく読み合うということと、周りの人からの承認がないと、自分の居場所がなくなり、不安になるため、余計に空気を読み合う関係を形成してしまう。頻繁なケータイ・メールでお互いのつながりを確かめ合い、終わりの見えない相互承認を繰り返す友達地獄は、その例である。

密着性の高い友達関係に拘束され、言動の自由を失っているような若者・子どもは、「友達」と認識されない外部の人間関係には無頓着であり、傍観者となっていじめを止めることはしない。

こうしたシビアなコミュニケーション環境では、自分の本心でなく、場の空気を読んだキャラを演じるコミュニケーション能力(人気獲得力)が必要で、キャラの序列化(人気の度合い)により、ポジジョン取りが決まり、スクールカーストを生み出していく。学校空間でのコミュニケーション環境は、カースト下位者へのいじめを誘発し、子供を自殺に追い込むなど深刻な事態へと発展する背景になっている。

空気を読む合う社会が、生きづらさを強いており、いじめを生んでいる。いじめは、空気を読むことのストレスから生まれている。

日本社会は、空気を読む文化であるため、戦争やいじめが起こりやすい。政治学者であった丸山真男は、戦前の天皇制を「無責任の体系」であるとし、「空気支配」体制が権力を消失させることから、日本人の主体性意識の欠如を指摘した。今なお、重要課題に対する政治家や官僚の対応を見ても、「無責任の体系」が支配している。原発事故の処理をめぐる迷走も、日本という社会の空気支配に押されてずるずると状況的に意思決定が行われる無責任な「現状追随主義」によるものだ。
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同じ過ちを繰り返す日本社会の構造的欠陥
2012/08/24(Fri)
今年は、猛暑が続く暑い夏になったが、家庭や企業などの節電効果で関西や九州などで計画停電は一度もなく、全国的に電力に余裕があるという。節電を続ければ、大飯原発3、4号機を再稼動させなくても、関西電力以外から電力を融通するだけで足りるとし、原発なしで十分に乗り切れる可能性が出てきた。

福島第一原発の事故をきっかけに、政府はいったん、「脱原発」に大きくかじを切ったかたのように見えたが、責任の重い決定になると立ちすくんでしまう。原発で出る高レベル放射性廃棄物をどうやって最終処分するかという大きな問題も残っている。

重大な原発事故を起こしたにもかかわらず、「国民生活と経済活動を守るため」と言って原発の再稼動を進めようとするなら、最終処分の問題は放置できないはずだ。

これまでの原子力政策は、重要なことを決めず、あいまいにしてきた歴史がある。電力業界も役所もこれまでの路線の誤りを認めず、惰性で続けているだけだ。原子力政策は、先送りを超えた無責任体制だった。

この国は、肝心なことは社会で決め事をもたずにやってきた。高レベル放射性廃棄物の最終処理のめどもないまま、原発を推進してきた構図も同じだ。決めるべきことを決めず、やるべきことを後ろへ先延ばし、やっかいなことは先送りにしたことから、国を危うくする罪がある。

最近、米国のNRC(原子力規制委員会)は、使用済み核燃料政策への問題の対応が決まるまで、原発建設認可の最終決定を停止すると決定した。米NRCは、福島第一原発事故を教訓に、使用済み核燃料の最終処分について最重点課題と位置づけている。日本とは大違いである。

正確な断層調査や津波の予測リスクを無視したまま原発増設を優先した「原子力ムラ」による安全神話は、太平洋戦争の必勝神話とよく相似している。

当時の国家指導者たちは、自らに課せられた責任を積極的に引き受けようとはせず、責任不作為を繰り返し、最終的な意思決定を誰が行なうのかわからないまま、全てが手遅れとなり、戦争の泥沼に突っ込んで行ったのである。

敗北を繰り返した日本軍の組織的問題点を指摘した「失敗の本質」という本が、ある。(1)根拠のない楽観論から、不都合な情報は無視する(2)タテ割り組織のため、統合機能が存在しない(3)従前の手法に固執するため、環境変化に適応できないなどと、当時の日本軍組織の在り方は、津波による東日本大震災と原発事故をめぐる今の日本国内の状況と二重写しになる。

70年近い時を経ても、統治能力もなく、「リスク管理不在」で、構造的問題点を今もなお引き継いでおり、いまだに日本人の手によって戦争の総括も行われていない。自己保身優先の事なかれ主義が招いた責任不作為の表れもと言える。

省庁間、組織間の情報共有がうまくいかず、被害ばかりを拡大させる。強靭な社会どころか、脆い社会である。変われない日本社会の構造的欠陥には、日本軍と現代日本に共通する組織的ジレンマがある。

日本の行政機構は三重、四重になっている。為政者でなく、官僚が政治的主導権を握っている官僚内閣制だからだ。責任不作為の悪しき官僚主義が統治構造そのものを支配している。役所や官僚自らが政治的利害を持ち、天下り先を含め、自分たちの利益を最大化している。東電や民間企業を見ても、官僚化した組織の弊害があり、誤った情報で失敗を招いている。

立法機関も、衆議院と参議院で権力の二重性を放置したままで、誰が統治しているのか、分からない状況になっている。首相は、1年ごとに交代するため、政治が不安定化し、統治構造が崩壊している。日本は、失われた20年で経済的に弱体化し、財政破綻に瀕している。財政破綻から抜け出すにはこうした統治構造の無駄を省くことが必要だ。

日本は、外部からのモーメンタム(きっかけ)がないと、ずっと変わらない責任不作為の体制的欠陥がある。

日本経済が弱体化したため、中国や韓国までが領土問題でどんどん攻勢をかけてくる。日本の統治構造という体制的欠陥を、早く解決しないとさらに同じ失敗を繰り返すだけである。
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