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生物多様性を守るのは、企業の責任
2010/11/02(Tue)
今、破壊的な勢いで生物多様性が失われている。最大の原因は、資源や原料を得るために世界各地で広がっている乱開発である。

人間の経済活動は、生物多様性や生態系サービスに依存しているため、すべて人と企業の問題である。自然環境は、人類全体にとって成長と発展の礎だ。それが永遠に失われる前に、直ちに保護して改善すべきである。この機会を逃したら、経済成長も阻まれる。繁栄か破滅かである。

こうした深刻化する事態を打開するため、企業の生物多様性への配慮が問われており、企業が責任を担うべきだとする声が高まっている。

医薬品や食品のもとになる動植物や微生物など「遺伝資源」は、かつて生態系豊富な場所から自由に持ち出され、研究・開発されていた。しかし勝手に持ち出して利益を上げるのは海賊行為である。

生物多様性条約の目的のひとつに、「遺伝資源」の利益を原産国と利用国が適切に分け合う仕組みづくりを掲げている。

国連地球生きもの会議(COP10)が名古屋で開催されたが、これまで日本は、自然保護に高い関心を払わない国だと数えられていた。そのため、今回の日本開催には、NGOから「ホスト国にふさわしくない」と批判されていた。

議長国の日本は、事務レベルでは出来ない荒業で、資金を求める途上国に対し「途上国支援金(既存のODA支援による看板の付け替えにすぎない)」という交渉カードを巧みに使い、「遺伝資源」の利用を定める「名古屋議定書」と生態系保全の世界目標である「愛知ターゲット」を各国に合意させた。

昨年末の気候変動枠組み条約会議(COP15)は、議長国デンマークの運営のまずさで頓挫したが、今回の生きもの会議では、各国代表の「コペンハーゲンの失敗を繰り返すな」という強い意識が議定書の背中を押した形だ。

「遺伝資源」の利用を定める「名古屋議定書」は、原産国に金銭を還元して利益を分け合う国際ルールだ。この利益配分をめぐって、先進国と途上国が激しく対立した。

先進国に資源を持ち出されてきた歴史がある途上国は、生物多様性の損失による打撃は大きく、悲惨な影響を受けるため、より厳しいルールを主張している。植民地時代から動植物を持ち出して、利益を上げていた先進国への不満は根強いからだ。

レアメタルやチョコレートなどの資源がどこから来ているのか、消費者は知らない。資源獲得の裏で、ゴリラやオランウータンなどの森が失われていることも、内戦や国際紛争が起きていることも知らない。

中部アフリカのコンゴでは、金やダイヤモンド、レアメタルの開発利権が絡み、周辺国も介入し、国際紛争に発展している。

携帯電話やパソコンなど幅広い電子機器に使用されているレアメタルの採掘が、武装勢力の資金源となっているからだ。7月に成立した米国の金融規制改革法で、コンゴと周辺国原産のレアメタルをとって利用した企業は、有価証券報告書の中で報告する義務を負うことになった。そのため、アップルやヒューレット・パッカード(HP)、ソニーといったハイテク企業や電子機器メーカー、部品産業などに影響が広がっている。

企業が途上国から調達した原材料資源のサプライチェーンに関する情報公開で、社会的責任を課せられたのである。

欧米でのCSR(企業の社会的責任)の背景には、social license to operate(社会的な操業許可)という考え方がある。企業は社会からのライセンスがあって初めてビジネスが許されるというものだ。このライセンスは目には見えないもので、企業は社会からの期待に応えることでこの暗黙のライセンスの維持を図っている。

しかし今や生物多様性の保全は、企業の責任になっている。CSRでなく、本業で生物多様性に取り組まないと、消費者から支持されない。生態系を犠牲にしない経営を実現できるかが問われている。

消費者は、トレーサビリティを示す認証マークなどで企業の製品が生物多様性に配慮したものかどうかを見分ける必要がある。

日本企業は、地球温暖化対策に比べ、生物多様性への「気づき」が足りない。生物多様性という意味が企業活動にもっと浸透すれば、社会を変える力になる。
具体的な行動に移ることが日本企業に求められている。「名古屋議定書」はそのきっかけになる。
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TPP参加で農業を再生せよ
2010/11/09(Tue)
政府が検討するTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を巡り、賛否両論に割れて大騒ぎとなったため、参加の可否についての結論は先送りとなった。

TPP参加に反対する農水省は、農業生産額が年4兆円も減り、コメ農家がほぼ壊滅するという試算を出した。これに対し、推進派の経済産業省は、輸出が約8兆円増えるとの試算を示した。両省ともそれぞれの立場を正当化しようと懸命だ。

TPPは、関税をなくし、人やモノ、サービスの動きを自由化することで経済成長したい国々の経済統合である。TTPは2006年にシンガポール、ニュージーランドなど4か国で発効し、米国、豪州など5か国も参加を表明し、9か国の交渉が続いている。

日本が参加しなかったら、日本を囲む国々が自由貿易圏を形づくり、鎖国している日本だけが孤立する。今でも日本は、自由貿易協定(FTA)交渉で出遅れたため、先にEUや米国とのFTAを発効させた韓国より不利な立場に置かれている。

現在の農業保護政策を続けるなら、TPPに参加してもしなくても、農業は衰退するだけである。農業従事者はますます高齢化し、農地を貸たくても後継者がいなく、休耕田が増加するからだ。このままでは将来はなく、抜本改革を迫られている。

TPP不参加であれば、輸出産業はますます海外に進出して、国内は空洞化し、結果として雇用がさらに減少する。農業所得より兼業所得が多い兼業農家でも、兼業先がなくなることだってある。雇用への影響が深刻化するため、不参加のデメリットの方が大きいのだ。

資源のない日本は、貿易立国で生きる道しかない。国内農業保護を優先して、国際的な流れに乗り遅れたら、亡国の道を歩むことになる。通商国家として生きるしかない日本にとって、TPPによる自由貿易圏が出来ようとしているのに参加しないという選択はありえない。日本経済の再生、雇用拡大を考えるなら、TPP参加は、優先的に進めるべき政策だ。

日本の農業保護政策は、外国の農産物に高い関税をかけることで、国内価格を維持してきた。消費者は、割高な農産物を買わされ、そのお金が農家の所得維持に回ることで、農業保護のコストを負担している。

しかしこれからの農業保護は、これから関税ではなく、農家への直接的な支払いで行うべきである。自由貿易を掲げる米国やEUも農業を保護している。農家の所得目減り分に対し、政府が農家に直接お金を支払い、自由貿易と農業保護の両立を図るのが、世界的な潮流になっているからだ。

品質の良い日本のおコメは、割高でも中国のスーパーで飛ぶように売れている。関税をゼロにすれば、価格が下がり、下がった国産米は、輸出でもっと稼げるようになる。米価維持のために行っている減反政策も意味がなくなってくる。減反廃止で、環境維持など水田の多面的機能を守って行ける。

価格が下がると困るのは、農家よりも手数料が減ってしまう農協だ。選挙区が農村部の政治家は、兼業農家が組合員の大半を占める農協の圧力に怖いと思っている。

農産物の輸入自由化につながるTPPに対し、民主党内の反対派は、政治より政局を好む小沢グループの議員を中心に「農林水産業に打撃となり、来年の統一地方選に影響する」との懸念を強めている。国益よりも自分の選挙のことを心配している。

小沢一郎が民主党代表の時に、自由貿易協定(FTA)推進を主張し、代償として農家の戸別所得補償制度をマニフェストに入れたはずだ。所得補償だけ実施して、自由貿易を推進しないのは、集票目的のバラマキ政策であると思われてもしかたがない。選挙のことばかり考えて、政局にうつつを抜かし、「持続可能な力強い農業」政策を考えない政治家など、今の日本には要らない。

「守りの農業」ではなく、品質の良いコメを海外に売るなど「攻めの農業」でやって行かないと、農業は再生されない。農業の再生には、大規模な専業農家にお金を集中するなど、競争力を高める政策への転換が必要だ。

TTP問題はむしろ、農業の新たな発展のための抜本改革に取り組む好機ではないのか。
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政府のリスク管理は穴だらけ
2010/11/15(Mon)
尖閣ビデオのネット流出は、政府のずさんな危機管理を暴露し、ネット社会の新たな現実を突きつけた。ネット社会では、「国の機密情報」と「国民が求める知る権利」との境界線がぼやけてしまったからだ。

情報の透明性や説明責任が問われる時代に、「外交上の機密情報は、重要だから出せない」と言っても、国民は納得できない。情報をどこまで出せば、国民が納得するか、それを判断する「情報ガバナンス」能力が政府にはないことが本質的な問題だ。

政府が中国漁船船長の逮捕段階で、ビデオ映像を公開していれば、問題はこれほどこじれなかった。対応を誤った菅内閣の責任は免れない。44分のビデオ映像を見ても、「流出したことで、国益が極めて損なわれた」と保護に値する内容ではなかった。

日中関係の悪化を懸念して中国人船長を超法規的措置で釈放したなら、その時点で、きちんと情報を公開して国民に説明すべきだった。国民に知らされた情報は少なく、説明責任を全く果たしていない政権に、多くの国民はイラ立ちを感じている。中国人船長を釈放する一方で、ビデオ流出させた海上保安官を逮捕するのは、妥当ではないという議論が当然出てくる。ビデオ映像流出事件は、中国漁船衝突事件とパッケージで考えるべきである。だから批判の矛先が、中国よりも映像を公開してこなかった政府に向いてくる。

海上保安官は、このビデオ映像は国民には見る権利があり、一部の国会議員を対象にした限定公開だったため、このままで国民が映像を見る機会を失ってしまうとし、独断でやったと動機を語っている。ビデオ映像を投稿した海上保安官の行為には、日中両政府への抗議の意味が込められていたのであろう。

海上保安庁は当初、流出映像は石垣島海保と那覇地検しかないとした説明していたが、実際には海保庁内ネットワークで衝突直後から、職員なら誰でも自由に見られる状態にあり、機密というほどでなく、「秘密性」の認識がなかった。むしろ海保内でのずさんな保管実態の方が問題である。

サイバー犯罪として捜査している検察当局でも、「秘密性」の評価が分かれており、仮に起訴しても公判で「秘密性」を巡って問題になるであろう。

今回のビデオ流出は、新聞やテレビではなく、動画サイトYouTubeという新しいメディアを選んだ。動画投稿サイトの広がりで、内部告発のハードルが下がってきた。ネットを使った内部告発や情報流出は、即効性があるため、今後もいっそう増えていくだろう。

ネット社会になると、「情報への飢餓感」が加速するため、すべてを公開しろという声は当然出てくる。だから国民が納得できる公式な情報をある程度出さないといけない。

ネットによる内部告発サイトとして、元天才ハッカーでオーストラリア人のジュリアン・アサンジ氏が創設した「ウィキリークス(Wikileaks)」が有名だ。7月にアフガン戦争の秘密文書「アフガン戦争日記」を公開したことで、一躍知名度が高まった。

全て寄付金だけで運営している「ウィキリークス」は、既成のメディアが伝えていない政府や大手企業の機密を次々と暴露している。「ウィキリークス」創始者のアサンジ氏は、政府の不正を暴いて、より良い社会を築きたいとしている。

この内部告発サイトの目的は、世界中の政府や、企業、宗教に関わる機密情報を収集し、公開することにある。情報に飢えているハッカーやジャーナリスト、暗号の専門家など世界で約1200人が協力しているという。投稿者の匿名性を維持し、機密情報から投稿者が特定されないようにする努力がなされている。

内部告発者は、機密文書を内部告発サイトに投稿し、その投稿内容は、すべて暗号化され、世界中のいくつかのサーバーを経て情報保護法制の整ったスウェーデンのホストサーバーに厳重に管理される(ストックホルムの核シェルターを改造したところで)。これで、内部告発者の身元は判らず、ハッカーによる暗号解読後、ジャーナリストによる裏付け取材による検証を経て、本物と確認されたものが、ホームページに掲載されるという。

アサンジ氏は、米軍の機密文書を暴露したことで、米政府からスパイ容疑で告発されている。「ウィキリークス」も、人々の知る権利に応える“正義のメディア”なのか、それとも国家の安全保障を脅かす“敵”なのか、波紋を広げている。

こうした内部告発や情報流出は、使い方によっては、社会の毒にも薬になる。「情報への飢餓感」が強いネット社会では、十分な情報を伝えていない既存マスメディアに対する不満の反動がある。

ビデオの非公開という政府の判断の是非も含め、民主主義の土台となる政府の情報公開はどうあるべきか、絶えざる議論が必要だ。

菅内閣が「熟議の民主主義」を掲げるのであれば、国民が知りたい政府の情報をできる限り公開すべきである。犯人探しで思考停止してはならない。
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雇用減税で、雇用創出せよ
2010/11/22(Mon)
デフレが止まらない。デフレがさらにデフレを呼んでいる。国内需要の低迷が一層深刻化しているからだ。

大規模な財政出動や金融緩和で、内需を増やそうとしても、企業の生き残りをかけた値下げ競争は激しくなるばかり。企業が値下げ競争せざるを得ないのは、モノが売れないからだ。企業や個人がお金を持っていても、使わないのが、今のデフレである。

そこに急激な円高が追い打ちをかけている。円高では輸出が増えず、雇用を維持することが困難になる。また円高還元で安い輸入品が売れれば、国内のライバル品も対抗して値下げを迫られる。

こうした値下げ競争は、企業の業績をさらに圧迫するため、賃金カットや人員削減が行われる。収入が減る消費者は出費を減らすことから、価格下落がさらに進む。経済活動の縮小が止まらなくなるデフレスパイラルという悪循環に陥る。いわゆる「合成の誤謬」になっている。

低価格を支える現場で、非正規社員が増えると、さらにデフレが加速する。非正規社員やパート労働者のリストラで、専業主婦になる女性や、転職先が見つかない中高年・若者が増加し、ますます需要不足になる。病気になっても医療費が払えない。

さらには改正貸金業法が完全施行され、必要な融資を受けたくても受けられない「借金難民」が500万人も大量に生まれている。中でも大きな影響を受けているのが主婦たちだ。中にはヤミ金にまで手を出す主婦もいる。ヤミ金市場が膨張している。

これまでの政策の数々の失敗の経験から、デフレの原因は、間違いなく、需要不足で、就業者の減少によるものだ。需要拡大には、雇用創出が必要である。

日本の製造業が、次々にグローバル競争で負けるようになったのは、リストラや早期退職勧奨制度によって、技術やノウハウを持った中高年のOBが韓国企業や中国企業に再就職し、それまでに身につけた技術、ノウハウを教え、指導するため、人件費の安い韓国企業、中国企業とまともに競争できなくなっているからだ。雇用が維持されないと、それだけその企業の技術やノウハウが、海外に流出することになる。

こうした雇用状況を重視した政府は、40%の法人税を来年度から35%に引き下げる方向で検討している。その狙いは、急激な円高で海外に流出しかねない国内製造業をつなぎとめるのが主眼になっているからだ。

連合も経団連の法人税引き下げ論に、「減税分は国内投資や雇用に回されるべきだ」と同調する姿勢を示している。

しかし法人税を引き下げたとしても、減税分は内部留保や海外生産拠点の拡充に向かうだけで、雇用拡大にはつながらない。韓国を見れば分かる。サムスン電子が過去最大の利益を出したが、若者の深刻な失業率は改善されず、法人税率の引き下げ効果に疑問の声が高まっている。

雇用創出には、むしろ雇用を増やした企業を減税する優遇税制の方が良い。韓国の李明博政権も最近、雇用創出のため、企業の設備投資に対する税制優遇を廃止し、「雇用投資」した企業を減税する税制改革を行おうとしている。

米国のオバマ政権も、雇用創出に企業減税が必要であるとし、8週間以上失業している人を採用した企業に対し税控除による優遇措置を実施している。

日本政府はデフレによる悪循環を、雇用を増やすことで断ち切ろうとしている。消費に回るお金を増やすため、「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を打ち出したが、建設や土木業界の雇用や給料の維持が中心で、新しい産業を創り出す効果など期待できない。

ようやく政府税制調査会が、雇用創出に取り組んだ企業の税負担を軽減する「雇用促進税制」のプロジェクトチームの初会合を開いたが、具体的な制度設計が進んでいない。

収益を上げている割りに雇用数の少ない金融機関や大企業は優遇する必要はない。当然法人税を納めていない赤字企業も対象外である。未就業の人が、例え低額でもできるだけ多く雇用できるようにすべきであり、雇用増で所得税の増加になる。雇用減税の方が需要拡大に、より一層効果的である。また所得格差の是正にもつながる。
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