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「市場の失敗」や「政府の失敗」をリスクヘッジする「寄付社会」の創造
2009/10/02(Fri)
寄付文化が進んでいる米国では、寄付金総額がGDPの約2%を占めており、その約8割が個人寄付金である。ボランティア精神が旺盛なため、政府の支出に比べてはるかに大きい民間・個人からの寄付金が、医療、福祉、教育などを支えている。また一方、福祉政策を重視する欧州では、国がより多く支出することで高福祉社会を支えているが、税金は高負担である。

日本は、米国に次ぐ個人金融資産大国(約1500兆円、6割超が高齢者に集中)でありながら、寄付金総額がGDPの約0.12%と少ない。しかもその寄付主体は圧倒的に企業や法人で、個人寄付はわずか5%にしかすぎない。1500兆円の個人金融資産は、国の社会保障制度を信頼していないため、老後の蓄えとして過剰な貯蓄残高となっている。その内の約850兆円が、金融機関の国債買いを通じて国の財政赤字を支えているが、それでもまだ約650兆円の国民貯蓄がある。

日本の福祉政策は、欧州の高福祉国家のように手厚く支出しているわけでもなく、また低福祉の米国のように民間・個人の寄付額で支えているわけでもなく、各世帯の家計に大きく依存している。しかし、高福祉政策は、公共経済に依存するため、税の高負担や政府の肥大化など「政府の失敗」というリスクを伴う。反対に低福祉政策では、市場経済に依存するため、所得格差が拡大するなど「市場の失敗」のリスクがある。

その中で、市民やNPOなどの社会セクターは、市場の欠陥と政府の役割を埋める機能があるため、「市場の失敗」と「政府の失敗」という両方のリスクをヘッジすることができる。社会セクターの活動は、地域や社会に投資する寄付金で支えられている。つまり、寄付金を経済資源とする「寄付社会」を創造することで、「市場の失敗」や「政府の失敗」のリスクをヘッジすることが期待される。

国の財政赤字で財政負担が困難である以上、民間・個人による寄付文化を根付かせる政策が不可欠であり、国が率先して寄付税制を拡充化することが必要なのである。特に税金の無駄遣いをなくすためにも、政府だけでなく、社会セクターに税金の一部を寄付金として支援する税額控除制度が望まれる(前記事9月26日)。

しかし、「寄付社会」の実現には、まだ大きな問題が残っている。「意志のあるお金」を社会に活かしたいと思う個人の寄付意識はかなり高いにもかかわらず、寄付しない人々が多い。その大きな理由として、寄付金が本来の社会貢献活動に使われるかどうかわからないとの不信感があること、また信頼できる寄付先の情報がほとんどなく、寄付者と寄付先を直接橋渡しする仕組みがないことが挙げられる。つまり、寄付者と寄付先の間には、情報の非対称性があるため、この問題を解決することが重要である。

そのためには、寄付対象となる団体や活動の情報が入手可能で、信頼できる寄付先が選べる社会的信用性を付与した「寄付金市場」の創設が必要である。また寄付先の評価が重要であるため、透明性の高い情報公開(理念や目標、ミッションなど)や第三者機関による格付け情報、あるいはどのように社会に影響を与えたかのソーシャルインパクトの評価も不可欠である。

さらに上場対象として、広く各種団体まで拡げることが望ましい。例えば、社会的に信用性の高い団体(NPO、NGO、地方公共団体など)を上場させることである。透明性の高い「寄付金市場」の環境整備を行うことこそが、「寄付文化」を促進させる推進力となる。
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殺処分ゼロの動物愛護を考える
2009/10/09(Fri)
動物愛護週間に因んで、ペットの殺処分をTV番組などで取り上げる機会が増えている。飼い主に捨てられ、保健所など行政施設に持ち込まれる犬猫は、毎年約30万匹殺処分されている。命ある犬猫がまるでゴミのように処分される。殺処分で使用される炭酸ガスによる窒息死は、実際には安楽死ではなく、悶絶死である。人間の都合で物言えぬ犬猫を殺傷することは、正当化できず、殺処分ゼロにするシステムを考える必要がある。

熊本市は、殺処分ゼロを目指して、保護した犬を紹介するホームページを開設し、迷い犬を飼い主に戻すことや里親探しを続けている。また迷子になる犬や猫を減らすため、飼い主に「迷子札」を付けてもらう運動に取り組んでいる。殺処分率を10年間で10分の1まで減らしたことで、1匹ずつ麻酔薬などによる安楽死が可能になっている。「殺処分をなくそう」を合言葉にする熊本市の取り組みは、全国の自治体にも広めるべきである。

一方、ドイツは、犬の殺処分ゼロで、処分施設のない国である。捨てられた犬猫や飼い主が飼えなくなった動物は、民間・個人からの寄付で運営される「動物の家」というシェルターに収容され、里親探しをしながら生涯面倒を見てくれる。まだドイツは、犬税を納めることが義務付けられている。犬税の目的は、犬の環境を整えるためだけでなく、頭数をコントロールすることにもある。悪徳ブリーダーや多頭飼いを減らす効果があるとされている。

また欧米では、生後8週齢未満の犬猫の流通を法律で禁止している国が多い。生後8週齢未満の子犬や子猫には、母犬や兄弟犬とのふれあいや学習期間(社会化期)が必要であり、社会化期を経ずに母犬や兄弟犬から引き離されてしまうと、しつけが困難な性格になり、あるいは病弱な体質になってしまうからである。

日本では、かわいらしさで購買欲を誘うため、子犬や子猫が生後8週目を待たずに販売されている。また社会化期を知らない飼い主がそうした子犬や子猫を衝動買いするケースが後を絶たない。それ故に、問題行動を起こしたり、あるいは病気にかかりやすくなるなどの理由から飼いきれなくなり、安易な理由で保健所に犬猫を捨てる飼い主が多い。こうした背景から、日本でも2005年の動物愛護法改正の際、環境省が生後8週齢未満の犬猫の販売を禁止する方向で検討したが、ペット業界の反発などから断念した。

犬猫殺処分の現状からして、供給過多であることが根本原因である。そのため、繁殖制限こそが必要不可欠である。国の判断は、子犬や子猫に対する需要が非常に高いとかの理由で、業界の利益を優先させ、小さな命の未来を犠牲にしている。 なぜ、命ある犬猫が、使い捨ての商品として扱われるのか。動物の命よりも利益追求を優先させる現在の日本の社会は、持続可能な社会につながらない。

民主党政権の動物愛護に対する政策は、「不幸にも捨てられた犬猫が殺処分されないよう、環境整備として犬猫の保護期間の延長、保護施設の拡大、NPO等への譲渡の推進などに尽力します」と謳っている。その実現を期待している。
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意志のあるお金が実現する持続可能な社会
2009/10/16(Fri)
リーマンショックで広がった世界金融危機は、ヘッジファンドなどの投資家が短期売買を繰り返す強欲な金融資本主義によって引き起こされた。すべての投資家が環境や「社会的な利益」に配慮した投資を行っていれば、未曾有の金融危機は起きなかったかもしれない。

投資先を選ぶ際に、売上高や収益、株価が評価基準となっているが、これからは「環境・社会・ガバナンス(企業統治)」に配慮することが求められている。つまり、低炭素社会に向けてCO2ガス排出量削減による環境への取り組みや社会的活動を評価指標にすることである。そのため、排出量あたりの利益や生産性など排出情報を開示した企業を支援する時代が到来すると言われている。

「社会的責任投資(SRI)」は、環境問題や地域社会への社会貢献など、企業の社会的責任に注目して投資する。サブプライム金融危機以後の欧州では、こうしたSRIファンドに個人投資家からの資金流入が増加している。また社会の持続性を考えて社会貢献活動を行う企業への投資が収益につながるため、SRIは社会をより良い方向に発展させると考える機関投資家が多く、特に年金基金は、SRI市場の中核的な存在になっている。つまり、「意志のあるお金」が、持続可能な社会を築くという考え方が高まっている。

しかし、日本におけるSRI市場は、欧州に比べて規模が小さく、そうした意識も低い。過剰な貯蓄になっている約1500兆円の個人金融資産があるにもかかわらず、「意志のあるお金」を「社会的金融(ソーシャルファイナンス)」として社会公益の実現に活かそうとする動きが弱いままである。

個人の社会的責任を果たしたい、あるいは社会参加・社会貢献をしたいという意識に基づく「意志のあるお金」が、豊かな社会貢献活動を支えることから、SRIの潜在的需要を掘り起こすインセンティブを検討することは極めて重要である。最近では、損得勘定でなく、特定の社会事業や取り組みに共感する個人が、事業主に直接出資する社会貢献ファンドも増えている。自分の出資金の使途が目に見えることに共感しているからである。

NPO活動による社会事業は、ハイリスク・ローリターンであるため、金融機関は融資しないが、代わりにNPOバンク、市民バンクなどが支えている。欧州では、金融で環境や社会的問題を解決する銀行が、融資先の情報公開を徹底したことにより、「社会的リターン」や「社会的配当」を求める預金口座が増加した。日本も同様に、幅広く「意志のあるお金」を集めて、「社会的なお金」の流れにする金融機関が増えることを期待したい。
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ソーシャルビジネス支援に社会株式市場の創設
2009/10/22(Thu)
前回の記事で、「意志のあるお金」が持続可能な社会を促進させることから、SRI(社会的責任投資)市場の拡大が重要であると書いた。企業もまた、持続可能な社会の実現に向けてCSR活動の取り組みを進めている。CSR活動を評価するSRIインデックスは、企業が何をもって社会的責任を果たしているかで異なってくる。その中で、社会貢献活動を行う民間団体を積極的に支援する企業を組み入れたSRIファンドは、金融機関が創出することにより可能である。

一方、個人は直接投資を通じて特定の社会問題解決を目に見える形にしたいというニーズがある。そのニーズに応えるものとして、ソーシャルビジネスが注目されている。最近、民主党政権になって政治やマスメディアにおいて、ソーシャルビジネスの重要性が強調されている。特に無駄な公共投資を見直す政策として、ソーシャルビジネスを活用しようとする動きが高まっている。つまり、行政部門の公共サービスを民間で新しく作り変えるソーシャルビジネスである。

しかし、ソーシャルビジネスが、行政や企業、市民などの支援サポーターなど社会全体の理解や共感を得たとしても、実際には、資金調達の機会を得ることが容易でなく、持続的な事業活動が展開できない。日本は、米国とは違って多くの財団から資金援助が望めないことから、新しい仕組みによる資金調達の場を検討すべきである。

また、特定の社会課題解決モデルをデザインしたソーシャルビジネスに、支援ファンドを創ることも重要である。その場合、個人は、投資・寄付した資金がどのようにして社会課題解決に役立つのかを知りたいため、社会的リターンの評価指標づくりや、社会課題解決モデルなど事業活動の情報公開を求めるディスクロージャー制度を整備することが必要である。

さらに、持続的な資金調達を望むソーシャルビジネスと社会的リターンを求める個人を、直接つなげるソーシャルビジネス向け公設市場の創設が求められる。つまり、個人や民間がソーシャルビジネスに直接出資できように、良質のソーシャルビジネスを上場させ、社会の公器として発展できるように便宜を図る法制度が重要である。

ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス博士はソーシャルビジネスのための「社会株式市場(Social Stock Exchange)」設立を提唱している。ブラジルのサンパウロ証券取引所で、世界初の社会株式市場が実現しているし、南アフリカでも設立されている。同様にロックフェラー財団などの後押しで英国でも社会株式市場の設立準備を進めているし、他国でも追随する動きがある。今や社会貢献を目的とした公設の資金市場の実現可能性は、グローバルで高まっている。

営利企業による市場経済と政府部門による公共サービスとは別に、サードセクターの非営利部門が、市場機能を活用した仕組みで社会貢献活動を活発化させることが重要である。非営利セクター向けに新たなスキームの「社会株式市場」を創設することで、ソーシャルビジネスは持続的な資金調達が可能になる。ソーシャルビジネスが積極的に社会貢献活動を実践できるように環境整備を進めていくことが望まれる。
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ヒューマン・ニューディールで安心社会を創る
2009/10/28(Wed)
米国がレーガン政権以来、推し進めてきた新自由主義経済は、富裕層を優遇することで、貧しい者にも自然に富がしたたり落ちる(トリクルダウン)という「トリクルダウン効果」を謳った経済政策に基づいている。豊かな人がより豊かになれば、そのおこぼれにより貧しい人も豊かになれるということで、「おこぼれ経済」とも呼ばれている。

日本でも、竹中平蔵元総務相が市場原理主義による「トリクルダウン効果」を主張し、小泉構造改革による郵政民営化と規制緩和を強力に推し進めた。その結果、大企業や富裕層に対する大盤振る舞いが行われた一方で、社会保障の削減や派遣法改正など規制緩和の行き過ぎにより、多くの国民に痛みを与えてしまった。

しかし、規制緩和や民営化で儲けた企業の超過利潤は富を求めて海外に流出し、グローバルマネーとして世界中を動き回った。そのため、内需創造ができなくなり、「トリクルダウン効果」は成り立たなくなった。そして豊かな人はより豊かになって、貧しい人はより貧しくなり、貧困率が上昇した格差社会になってしまった。

また、日本経済のGDPがプラス成長であったにもかかわらず、新興国の需要拡大で原油価格が高騰した分、所得は下がり続けた。さらにリーマンショック後、米国の過剰消費による輸出依存で支えられていた日本経済が失速した結果、経済の川上部門にある企業から川下の消費者にお金が流れなくなり、消費を萎縮させてしまった。

富が使われて消費されることを前提としたアダム・スミスの時代には有効であった「トリクルダウン効果」は、現代の経済学では既に否定されている。ノーベル賞経済学者であるコロンビア大学スティグリッツ教授は、「トリクルダウン効果」は「幻想」以外の何物でもないと批判した。自民党の与謝野前財務相もまた、竹中経済理論の「トリクルダウン効果」を「人間の社会はそんな簡単なモデルで律せられない」と切り捨てた。

毎年3万人を超す自殺者の中には、失業などで経済的に追い詰められたり、健康を害したり、最低限の生活もできなかった人々が多い。低所得者の占める貧困率(政府発表)は、15.7%(07年)、貧困状態にある子供の貧困率は14.2%と最悪で、親から子に伝わる負の連鎖になっている。

穴だらけのセーフティ・ネットを立て直して安心な社会を創るには、医療福祉、介護、保育、教育、農業などの生産性の低い労働集約産業に集中投資する「ヒューマン・ニューディール」政策が重要である。こうした社会保障サービスは、社会コストではなく、未来への投資であり、内需主導による成長産業で雇用創出を図るものである。

人的資源に対する投資で未来に備える「ヒューマン・ニューディール」政策は、韓国で既に始まっている。韓国政府は、経済危機による中産層の崩壊を防ぐため、塾などにかかる費用や教育費、住居費、医療費などの家計支出を軽減する「ヒューマン・ニューディール」政策を推進している。また創意的なアイデアや技術、専門知識を基盤に、円滑な創業を支援する「1人創造企業」の育成を進めている。

日本の民主党政権は、脱トリクルダウン効果を目指し、国の予算をコンクリートから人に直接投資する政策へ転換した。つまり、成長できない経済の下で生活水準を向上させるため、生産者優先政策から消費者優先政策へと舵を切った。税金の無駄遣いや無駄な公共事業を止めて、その財源で子育て、教育、介護等の社会保障を充実させようと取り組んでいる。政権交代とともに新たな経済社会構造の変化が起こる時代となった。

鳩山首相は所信表明演説で、政治的に弱い立場の人々や少数の人々の視点を尊重する友愛政治を進めるとした。そして「人間のための経済」への転換を提唱した。新自由主義経済が破綻した今、景気対策の柱と位置づけられるグリーン・ニューディール政策とともに、「ヒューマン・ニューディール」を両輪として推し進めてもらいたい。
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