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求められる持続可能なディーセント・ワーク
2010/01/29(Fri)
年末年始に、住居を失った失業者に宿泊場所や食事を提供する公設派遣村が開設された。昨年と違い、政府が主導する貧困者支援策として各自治体で実施された。政府は派遣労働者の不安定な雇用を改善しようと今、動き始めている。

労働は単に働いて賃金を得るだけでなく、医療や年金、失業保険などの社会保障システムと深くかかわっている。しかし、このセーフティネットは、原則として終身雇用で長期間勤務する正規雇用だけを前提としている。

グローバル競争の激化で経済環境の変化が速い時代には、ビジネスモデルの寿命が短いため、企業の競争力は衰退しやすく、労働生産性が落ちる。そのため、企業は、競争力強化に正社員の人減らしと派遣など非正規雇用の拡大を進めてきた。その結果、正社員の雇用が不安定化し、新卒者の正社員への採用も抑制され、残った正社員は、週60時間以上の長期間労働で過労死症候群やうつ病になっている。

また、グローバル化の影響で労働派遣法の規制緩和が進んだ結果、労働者の3人に1人が非正規雇用になり、雇用が不安定してしまった。そのため、世界金融危機で企業の雇用調整により非正規雇用者が簡単に解雇されてしまい、セーフティネットによる失業保険や労災の適用から漏れる人々が増加した。さらに世帯主や単身者の非正規労働が増加してくると、非正規の雇用調整が貧困問題をもたらす原因になってきた。

非正規雇用が増えたのは、正社員の雇用保障と非正規雇用者の雇用保障に大きな差があるからである。だが、非正規雇用そのものを禁止することは、失業を増やすだけになる。正規雇用を前提とする日本の雇用セーフティネットは、穴だらけで完全に機能不全を起こしている。

持続可能な雇用セーフティネットを構築するには、非正規雇用や正社員の長時間労働を解消するための労働政策が必要である。また同時に、住まい、教育、育児、医療福祉など社会的・公共的インフラなどを整備させることも重要である。

その一方で、財政赤字拡大や雇用悪化とともに、少子高齢化の進展で医療・年金等のセーフティネットの再構築が求められている。高齢者世代には医療費自己負担拡大や年金支給年齢引上げ等の社会保障削減、現役世代には増税、各種保険料引上げ等の負担増大が予想されるため、将来不安を高めている。

こうした状況下で、持続可能なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を考えるには、少子高齢化の進展を前提に、医療や年金、失業保険、職業訓練、能力開発手段の充実、公営住宅等を含めた持続可能な雇用セーフティネットを構築していく必要がある。その解決の方向性として、高齢者労働の活用と女性の労働参加を増やすことである。これによって現役世代の負担が軽くなり、労働力人口減少も緩和する。高齢者には年齢による体力衰えがあり、女性には出産や育児等の負担があるため、幅広い労働形態(パート労働や在宅勤務等の非正規労働)を拡げる必要がある。

中高年層が年齢に関係なく雇用されるには、従来の年功型賃金体系を見直して、労働生産性等を反映した賃金体系に転換する必要がある。その場合、求職者の労働生産性はその人の持つ技能、知識等によって判断される。このため、職業訓練や能力開発手段の充実、職能資格体系の整備などが重要となる。さらに、女性などの労働参加を促すには、保育所の充実化を推進することで出産や育児負担を軽減するほか、非正規雇用(パートタイム労働等)にかかる労働条件を大幅に改善していく必要がある。

こうした非正規雇用の労働条件改善に関しては、正規雇用との均等化を進めたオランダ・モデル(フレキシビリティー&セキュリティー法)が参考になる。現在の日本と同じように、高い若年層の失業率に悩んだオランダは、大胆な雇用改革を行ない、「同一労働同一賃金」の下で非正規労働者にも正社員と同等の賃金とセーフティネットを構築した。企業には雇用調整として非正規雇用(フレキシビリティー)が認められるかわりに、企業は派遣社員に対して、職業訓練を含めた十分な社会保障(セキュリティー)を与えなければいけない。その結果、仕事で「何をしたか」、「何ができるか」がすべてとなり、労働者全体の収入が安定して消費がのびたことで国の経済は飛躍的に成長した。世界金融危機で労働者が解雇されても、充実した失業保険があり、安心な社会になっている。

しかし、オランダ型ワークシェリング(パートタイム労働による雇用創出)を日本で実現しようとしても、ハードルが高すぎる。ひとつは、オランドの所得税や社会保障料は、日本の倍以上であるため、充実したセーフティネットを維持するには、それ相応の税負担を国民的合意で受け入れる必要がある。もうひとつは、政府、使用者側(経団連など)と労働者側(連合など)などの政労使三者のよるコンセンサス(合意)ができるかどうかである。オランダの場合は、全てコンセンサスに基づいて決める合意社会であり、また安楽死を認めるなどプラグマティズム精神に基づく合理主義の国だからこそ可能になった。

だが、日本のコンセンサス社会はオープンでも前向きでもなく、しかも知的誠実さがないため、誰も決断しないただの玉虫色の談合方式である。国民が納得するまで、激しく議論を戦わせた末に到達したコンセンサスではない。現実を正面から見つめる能力を持っていないため、変化を好まない不確実性の回避の強い社会になっている。

さらに、日本では社会保障費が企業の負担になるとの考えが強く、パートタイムという働き方はなかなか導入されない。政府は、財政赤字で予算が出せない状況にあり、政治的リーダーシップが発揮できない。未だに非正規雇用の待遇改善をめぐって、労使双方は交渉のテーブルに着いていない。

政治や経済は何のためにあるのか、国民1人1人が幸せになるためにある以上、その幸せを感じる価値観に合わせて考え方を改めていく必要がある。経済政策の基本は、「働きたい人に働ける職場を作る」ことで、雇用を守ることが最大の経済対策、景気対策のはずである。ディーセント・ワークの実現のため、改めて「われわれは何のために働くのか」という原点に戻って、社会全体で考える必要がある。そして新しい働き方を再構築する必要があるのではないだろうか。
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派遣法改正案は抜け穴だらけ
2010/05/05(Wed)
この国は、まともに派遣労働をつくる気はないらしい。

市場経済のグローバル化で企業が生産拠点を海外に移した結果、正社員であった層の3分の1が、不安定な非正規雇用の派遣労働者に置き換わってしまった。

経済変動の激化に派遣労働が必要であるなら、あおりを受ける派遣労働者を支えるサーフティネットが不可欠だが、国は、派遣労働者が納得できる「均等待遇」や「派遣先の責任強化」を整えようとしない。「均等待遇」も団体交渉も認められない働き手を放置すれば、賃金は上がらず、デフレ克服につながらない。

国会で審議中の労働者派遣法改正案に対して修正を求める動きが相次いでいる。改正案の問題点は、「派遣労働の原則禁止」としながら、例外規定が多すぎて、企業側に都合のよい抜け穴だらけになっているからだ。派遣先の派遣元への責任転嫁も改善されないままである。派遣労働者保護の欠如から骨抜きの法案となってしまい、いったい何のための改正なのだろうか。

仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣は、専門的の高い「26業務」を、製造業派遣は長期の雇用契約を結ぶ「常時雇用」を例外にしたことから、ほとんどの派遣が従来通り認められてしまう懸念が出てきた。

改正案の目玉である、違法派遣があれば、派遣先が直接雇用を申し込んだとみなす「直接雇用みなし制度」にも不安がある。「みなし制度」の問題点は、派遣社員のときの労働条件と同じでいいとされ、短期契約や低賃金が改善されないことである。また派遣先が違法行為と知らず、知らなかったことに過失がなければ、「みなし制度」の対象にならない条項になっている。これでは、従来と変わらず、派遣労働者が声を上げても救われない。

改正案の骨組みを話し合う労働政策審議会の公益委員は、政権交代前と変わらず、労働側委員に派遣労働者の代表はゼロ。労働者保護に値する抜本的改正には程遠く、派遣労働者の声が反映されていない。

派遣法は、派遣先企業が派遣社員を「事前面接」で選別することを目的とした行為を禁止している。改正案では、自民党前政権の改正案をベースにして、「派遣先の事前面接の解禁」を進めていた。この条項は、派遣労働者から「容姿や年齢差別、性差別の温床」と批判されると、削除されたが、委員たちは、「労使合意の尊重に反する」と抗議したという。

多くの正社員がリストラされて派遣労働者になっている厳しい現実があるにもかかわらず、正社員代表である連合は、賃上げのことしか考えていない。本気になって、労使交渉の場で、経営者側に強く派遣労働者の「均等待遇」を訴えるべき立場なのに、派遣労働者の声を反映させず、派遣改正案の成立を急いでいる。

また派遣法改正で、「事前面接」を経団連と合意事項にした連合は、 派遣労働者の利益を代表しているとは思えない。大企業の労組や公務員労組が集まった連合では、まともな派遣労働はつくれない。

まして組織率が20%に届いていない労働貴族の連合が、労働者の代表として政府にもの申したり、財界と協調したりすることは、日本の労働者にとって不幸である。民主党政権は、支持母体である連合だけを労働者の代表として扱っているが、中小企業労組である全労連や全労協の声も労働行政に反映させるべきである。

ストをしない労組は、欧米ではあり得ない。 欧米の労組に比べて企業に協力的な連合が労働運動をまったくしないため、日本の労働者は浮かばれない。労働条件の悪化に抵抗するべき労働組合が無力になっている。 

企業別労働組合は、正社員の減少に抵抗できず、組合員数を減らし続けている。終身雇用が崩れている以上、労組は、弊害ばかりの企業別労働組合ではなく、欧米のように、労働条件の基本が社会的横断的に決まる産業別労働組合に改組すべきである。

いくら派遣制度をいじっても実態に即した対応がなされなければ、真の労働者保護につながらない。改正案は構造的な問題に切り込もうとしていない。形だけ整えても、何の意味もない。

国のやるべきことは、派遣制度の見直しばかりではなく、不安定な雇用制度で困っている派遣労働者にセーフティネットの充実を図ることではないのか。

非正社員も正社員と同様に、「同一価値労働・同一賃金」による賃金方式が欧州で広まっている。そうした方式を日本社会で実現させていくためには、どうしたらいいのか熟議が必要である。

国は、派遣労働者が望む「均等待遇」を進めるためにも、当事者の声を国会に反映させるべきである。
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